昨年度から岩手県教育委員会によって岩手県公立高校入試の分析結果が公表されるようになりました。
その分析結果から上位層と中上位層で「差がついた問題」に注目して解説していきます。
まずは2023年岩手県公立高校入試の数学全体の結果です。
S層は入試得点が76点〜100点の上位層。
R層は入試得点が51点〜75点の中上位層。
S層(上位層)とR層(中上位層)の正答率の比較
大問 | 小問 | S層正答率(%) | R層正答率(%) | 差(S−R) |
1 | (1) | 100 | 99 | 1 |
1 | (2) | 100 | 87 | 13 |
1 | (3) | 100 | 87 | 13 |
1 | (4) | 100 | 98 | 2 |
1 | (5) | 100 | 99 | 1 |
2 | 96 | 65 | 31 | |
3 | 96 | 88 | 8 | |
4 | (1) | 98 | 92 | 6 |
4 | (2) | 98 | 64 | 34 |
4 | (3) | 89 | 50 | 39 |
5 | 78 | 45 | 33 | |
6 | 79 | 49 | 30 | |
7 | (1) | 98 | 96 | 2 |
7 | (2) | 98 | 91 | 7 |
8 | 97 | 91 | 6 | |
9 | 84 | 44 | 40 | |
10 | (1) | 79 | 33 | 46 |
10 | (1) | 93 | 44 | 49 |
10 | (2) | 42 | 2 | 40 |
11 | (1) | 96 | 78 | 18 |
11 | (2) | 41 | 6 | 35 |
12 | (1) | 95 | 87 | 8 |
12 | (2) | 2 | 0 | 2 |
下の2つのグラフはS層(上位層)とR層(中上位層)の正答率を比較したものです。
1つ目のグラフ…大問1から大問4までの比較
すべての問題が基本問題です。
上位層のS層はほぼ満点です。
中上位層のR層はところどころ取りこぼしがあります。
2つ目のグラフ…大問5から大問12までの比較
基本問題(大問5〜8、11(1)、12(1))と応用問題(大問9、10、11(2)、12(2))が混在しています。
上位層のS層は、大問10、11(2)、12(2)以外はきちんと得点できています。
中上位層のR層は、応用問題を解く時間が足りない、あるいは、最初から応用問題を解かないという生徒が多いと推測しています。
それでは、ここから上位層と中上位層で「差がついた問題」を解説していきます。
S層(上位層)内で差がついた問題
◉応用:大問10(2) 1次関数、動く図形の変化(S層正答率42%)
1次関数は中2の範囲ですが、中3の教科書(東書)のy=x2の単元に類似問題があるので、きちんと練習した人は正解できたのではないでしょうか。時間の経過とともに図形の状態を考察する必要があるので、なかなか理解しづらいところがあります。図形を動かしてどう変化するかを一度、自分でやってみると理解できると思います。
◉応用:大問11(2) y=x2のグラフ、面積が等しい(S層正答率41%)
中3の範囲です。y=x2のグラフ上で面積が同じ2つの三角形を作る時の点の座標を求める問題です。y=x2の応用問題としては典型的な問題なので、他のパターンの問題を含めて、理解と演習をすればしっかり得点できると思います。
S層(上位層)とR層(中上位層)で差がついた問題
基本問題編
大問 | 小問 | R層正答率 | S層正答率 | 差(S−R) | ||
① | 2 | – | 65% | 96% | 31 | 文字と式 |
② | 4 | 2 | 64% | 98% | 34 | 平面図形 |
③ | 4 | 3 | 50% | 89% | 39 | 平面図形 |
④ | 5 | − | 45% | 78% | 33 | 作図 |
⑤ | 6 | − | 49% | 79% | 30 | 箱ひげ図 |
以下の正答率はR層(中上位層)を示しています。R層(中上位層)の視点でコメントを書きました。
◎基本:大問2 数量を文字で表す(65%)
中1の範囲。「正方形の周の長さが4aのとき正方形の面積を表す」という問題ですが、正答率65%は少し低いと感じます。間違えてしまう原因はなんでしょうか?
◎基本:大問4(2) 平行四辺形で角度を求める(64%)
中2の範囲。二等辺三角形の性質と平行四辺形の性質、平行線の角の性質を使って角度を求めます。3つの要素を組み合わせて解くため正答率が低いのか?
◎基本:大問4(3) 円周の長さを求める(50%)
中1の範囲。中3の教科書(東書)の最初のページに出ています。半径の異なる半円の周の長さの和を求める問題です。この問題で正答率50%は低すぎる。
◎基本:大問5 三角形の高さを作図する(45%)
中1の範囲。三角形の高さを作図するのはそう難しくないですが、この問題の場合は、底辺の位置がいつもと違うので戸惑ったのかもしれません。それでも正答率45%は低すぎる。
◎基本:大問6 箱ひげ図の読み取り、理由説明(49%)
中2の範囲。箱ひげ図の問題は教科書改訂後、初めて出題されました。トレンドの問題です。データの読み取りは重要単元なので、十分な理解と演習が必要です。
応用問題編
大問 | 小問 | R層正答率 | S層正答率 | 差(S−R) | ||
① | 9 | 44% | 84% | 40 | 相似な図形 | |
② | 10 | 1-l | 33% | 79% | 43 | 1次関数 |
③ | 10 | 1-s | 44% | 93% | 49 | 1次関数 |
以下の正答率はR層(中上位層)を示しています。R層(中上位層)の視点でコメントを書きました。
◉応用:大問9 相似の証明、円と接線、円周角(44%)
中2と中3の範囲の融合問題です。それぞれの性質を見つけることができれば、そんなに難しくない問題です。相似の証明はほとんどが2角が等しいという相似条件を用いるので、きちんと演習をすれば十分に正解できるはずです。
◉応用:大問10(1) 1次関数、動く物体(36%)
中2の範囲。いわゆる思考力問題と言われる問題です。一見すると難しそうですが、内容はふつうの問題と変わらないことが多いので、設問をしっかり読んで解いてみるとできるようになると思います。
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